精神科の入院形態5種類について

精神科

精神科の入院形態5種類

精神保健福祉法に基づく入院形態には任意入院・医療保護入院・応急入院・措置入院・緊急措置入院がある。

自傷他害のおそれがある場合は都道府県知事の権限で措置入院か緊急措置入院となる。時間的猶予がある場合は2人以上の精神保健指定医の診察を必要とする措置入院とする。時間的猶予がない場合は1人の精神保健指定医の診察のみで良い緊急措置入院とする。緊急措置入院では72時間を超えて入院させることができない。

自傷他害のおそれがない場合は任意入院か医療保護入院か応急入院となる。患者本人の同意が得られれば任意入院とする。患者本人の同意が得られない場合は精神保健指定医の診察と家族等の同意を必要とする医療保護入院とする。患者本人の同意と家族等の同意が得られない場合は精神保健指定医の診察で応急入院とする。応急入院では72時間を超えて入院させることができない。医療保護入院と応急入院では都道府県知事に届け出る必要がある。

医療保護入院の問題点

人権擁護の機運から措置入院は減少傾向であるが、任意入院も減少傾向で医療保護入院が増加傾向となっている。

単純に人権擁護の観点から考えると本人の同意に基づく任意入院が最も望ましく、任意入院が増加傾向で医療保護入院が減少傾向となるのが望ましい。

実際に「任意入院させるために患者を説得することが重要であり、どうしても患者の同意が得られない場合に家族等の同意を得て医療保護入院させる」とされている。

しかし、任意入院の欠点として

①本人の同意を得るのが家族等に比べて難しい。

②「任意入院の患者は本人の申出があれば退院させなければならない」ように任意入院では患者の権限が大きく精神保健指定医の権限が小さい。

といったことがある。

これに比べて医療保護入院は「精神保健指定医が入院継続を判断できる」といったように、精神保健指定医の権限が大きく精神保健指定医にとっては「使い勝手の良い制度」となってしまっている側面があり増加傾向にあると言われている。

医療保護入院で入院した患者が精神保健指定医の判断に従わずに退院請求・処遇改善請求を出した場合は、退院請求・処遇改善請求の審査が第三者機関である精神医療審査会で行われることになる。

精神疾患のまとめはこちらから!

精神科の入院形態に関する医師国家試験問題

105G56:19歳の男性.「ご飯に毒が入っている」と言い、食事をしない状態が続いているため両親に伴われて来院した.3か月前から自室に閉じこもりがちになった.両親ともあまり接触しようとせず、ときに独り言が聞かれ、興奮して大声を出すこともあった.入院治療の必要性を説明したが、患者はかたくなに入院を拒否している.両親は入院を希望している.
この患者に適用される入院形態に関して正しいのはどれか.2つ選べ.

出典:第105回医師国家試験問題

厚生労働省:第105回医師国家試験の問題および正答について
  1. 家族等の同意が必要である.
  2. 知事への届け出が必要である.
  3. 治療費は全額公費負担となる.
  4. 入院期間は72時間を超えることができない.
  5. 2名以上の精神保健指定医の診察が必要である.

解答:1,2

解説:この患者に適用される入院形態は医療保護入院である。

1.←医療保護入院では家族等の同意が必要となる。

2.← 医療保護入院と応急入院では都道府県知事に届け出る必要がある。

3.←医療保護入院では保険適用後の3割が自己負担となる。措置入院では保険適用後の3割が公費負担となるので自己負担がない。

4.←入院期間が72時間を超えることができないのは応急入院と緊急措置入院である。

5.←2名以上の精神保健指定医の診察が必要なのは措置入院である。

111G48:22歳の男性。行動の異常を心配した家族に連れられて来院した。自室に閉じこもり、つじつまの合わない言動がみられるという。幻聴、被害妄想および精神運動性障害を認めた。器質的な要因が認められず、統合失調症で入院が必要と診断され、父親の同意によって医療保護入院となった。しかし患者は「自分は病気ではない。入院の必要はない」と主張して退院請求を出すことを希望した。
患者への説明として正しいのはどれか。

出典:111回医師国家試験問題

第111回医師国家試験の問題および正答について|厚生労働省
第111回医師国家試験の問題および正答について紹介しています。
  1. 「医療保護入院なので退院請求はできません」
  2. 「精神保健指定医は退院請求を却下できます」
  3. 「退院請求は精神保健福祉センター長に対して行います」
  4. 「退院請求の審査は精神医療審査会で行われます」
  5. 「審査結果はあなたではなく、病院に報告されます」

解答:4.「退院請求の審査は精神医療審査会で行われます」

解説:医療保護入院は精神科病院の管理者の権限の下で行われるので、患者はまず精神科病院の管理者に対して退院請求を行うことになる。精神科病院の管理者が退院請求を却下した場合、次に患者は都道府県知事に対して退院請求を行い退院請求の審査が第三者機関である精神医療審査会で行われることになる。

1.←医療保護入院では退院請求を行うことができる。

2.←精神科病院の管理者は退院請求を却下できる。そもそも精神保健指定医の判断に納得できない場合に退院請求するので精神保健指定医が却下できると意味がない。

3.←退院請求はまず精神科病院の管理者に対して行って、次に都道府県知事に対して行う。

4.← 退院請求の審査が第三者機関である精神医療審査会で行われることになる。

115F55:22歳の男性。家庭内で自室に閉じこもり「おれの悪口を言うな」、「外を通る人が窓からのぞいている」などの実際には認められないことを口走ることが多くなったため、両親とともに来院した。診察した精神保健指定医は、治療が必要であるが本人に治療意欲がないことを考え、医療保護入院とした。
禁止できるのはどれか。2つ選べ。

出典:第115回医師国家試験問題

第115回医師国家試験問題および正答について|厚生労働省
第115回医師国家試験問題および正答について紹介しています。
  1. 弁護士との面会
  2. 両親あての手紙
  3. 友人あての電話
  4. 家族の希望による自宅外泊
  5. 精神医療審査会への退院請求

解答:3,4

解説:主人公が末期癌であるドラマなどでしばしば外出制限・外泊制限が行われることを考えると、このケースでも外泊制限が可能なことは想像できる。次に難しく考えなくても、「弁護士との面会と両親あての手紙と友人あての電話」のどれを制限できるかと考えたときに一番重要度の低そうな「友人あての電話」を選ぶのは難しくない。

1.←犯罪の被疑者が接見禁止されていても唯一会うことができるのが弁護士である。その弁護士との面会を禁止は流石にできないと想像できる。

2.←信書(手紙)の発受(発信・受信)は制限されない。このため、両親あての手紙であっても友人あての手紙であっても制限されない。

3.←電話については制限される可能性があり、精神保健指定医は患者の状態に応じて電話を制限できる。

4.←医療保護入院では本人の意思に反しても治療を行う必要性がある場合があることから、個々の患者の病状に応じて外出や外泊の制限をされることがある。たとえ家族の希望があったとしても最終的に判断するのは精神保健指定医である。

5.←医療保護入院では退院請求を行うことができる。

措置入院と公費医療に関する医師国家試験問題

  1. 結核の一般医療
  2. 指定感染症による入院
  3. 精神障害者の措置入院
  4. 小児慢性特定疾病の外来治療
  5. 予防接種による健康被害の救済措置

解答:この問題は不適切問題であり正答が存在しない.

解説:公費医療には大きく分けると

①医療費に各種医療保険を適用した後に発生する自己負担分を公費で肩代わりする 。

②医療費に各種医療保険を適用せずに全額公費負担する 。

という2パターンがある。

全額公費負担というのは「患者の自己負担が存在するかどうか」ということではなくて、「各種医療保険を適用した後に公費負担するのか各種医療保険を適用せずに公費負担するのか」がポイントであることに注意する。

1.←結核は公費負担の仕方が特別であり良く出題される。18歳以上の大人は感染症法で結核医療に必要な費用の95%を各種医療保険と公費で負担して残りの5%が自己負担となると規定されている。18歳未満の結核児童の療養給付は児童福祉法で①のパターンで公費負担すると規定されていることに注意が必要である。

2.←感染症法は、一類・二類感染症、指定感染症、新型インフルエンザ等感染症を①のパターンで公費負担して、新感染症を②のパターンで公費負担すると規定している。この問題は不適切問題であり、選択肢(2)が指定感染症ではなくて新感染症であったら選択肢(2)が正解となる。

3.←一般的な措置入院は都道府県知事の権限で入院させるので、精神保健福祉法で①のパターンで公費負担すると規定されている。 ただし、麻薬中毒者の措置入院に限っては麻薬及び向精神薬取締法に基づいて公費負担される。 医療保護入院などでは公費負担されないので、医療費の各種医療保険適用後の3割は自己負担する。

4.←小児慢性特定疾病は児童福祉法で①のパターンで公費負担すると規定されている。

5.←予防接種による健康被害は予防接種法で①のパターンで公費負担すると規定されている。

  1. 生活保護法による医療扶助
  2. 労働基準法による業務上疾病の治療
  3. 麻薬及び向精神薬取締法による措置入院
  4. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による措置入院
  5. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律による結核患者の入院

解答:2. 労働基準法による業務上疾病の治療

解説:1.←生活保護受給者は各種医療保険の被保険者から除外されているので、医療費に各種医療保険を適用せずに全額公費負担するというパターンになる。

   2.←労働基準監督署長により業務上災害・疾病として認定された場合、労働者災害補償保険法に規定される労働災害補償保険(労災保険)が給付される。労災保険には会社が強制加入しており保険料は全額会社負担となっている。労災保険は医療保険とは異なって患者の自己負担がない。

   3.4.←一般的な措置入院は都道府県知事の権限で入院させるので精神保健福祉法で医療費に各種医療保険を適用した後に発生する自己負担分を公費で肩代わりすると規定されている。ただし、麻薬中毒者の措置入院に限っては麻薬及び向精神薬取締法に基づいて公費負担される。麻薬中毒者は鎮静作用のために暗く静かな場所に身を横たえたりしていることが多く、「自傷他害のおそれ」に該当しない場合が多い。そのため、精神保健福祉法に基づく措置入院を行えない事例が多かった。これを改善するために麻薬中毒者に対しては麻薬及び向精神薬取締法に基づく措置入院が行えるようになった。 よって、麻薬中毒者の措置入院は麻薬及び向精神薬取締法に基づいて公費負担される。精神保健福祉法に基づく一般的な措置入院では 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉 に基づいて公費負担される。

   5.← 結核は公費負担の仕方が特別であり良く出題される。18歳以上の大人は感染症法で結核医療に必要な費用の95%を各種医療保険と公費で負担して残りの5%が自己負担となると規定されている。18歳未満の結核児童の療養給付は児童福祉法で①のパターンで公費負担すると規定されていることに注意が必要である。

精神科の入院形態に関する看護師国家試験問題

  1. 応急入院
  2. 措置入院
  3. 医療保護入院
  4. 緊急措置入院

2.措置入院

  1. 入院の期間は72時間に限られる。
  2. 患者の家族等の同意で入院させることができる。
  3. 2人以上の精神保健指定医による診察の結果で入院となる。
  4. 精神障害のために他人に害を及ぼすおそれが明らかな者が対象である。

2. 患者の家族等の同意で入院させることができる。

  1. 未熟児の養育医療 ー 医療法
  2. 結核児童の療養給付 ー児童福祉法
  3. 麻薬中毒者の措置入院 ー精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉
  4. 定期予防接種による健康被害の救済措置 ー 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療 に関する法律〈感染症法〉

解答:2. 結核児童の療養給付 ー児童福祉法

解説:1.←未熟児の養育医療は母子保健法に基づいて公費負担される。

   2.←結核児童(18歳未満)の療養給付は児童福祉法に基づいて公費負担される。18歳以上の大人の結核患者は感染症法で結核医療に必要な費用の95%を各種医療保険と公費で負担して残りの5%が自己負担となると規定されている。

   3.←麻薬中毒者は鎮静作用のために暗く静かな場所に身を横たえたりしていることが多く、「自傷他害のおそれ」に該当しない場合が多い。そのため、精神保健福祉法に基づく措置入院を行えない事例が多かった。これを改善するために麻薬中毒者に対しては麻薬及び向精神薬取締法に基づく措置入院が行えるようになった。 よって、麻薬中毒者の措置入院は麻薬及び向精神薬取締法に基づいて公費負担される。精神保健福祉法に基づく一般的な措置入院では 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉 に基づいて公費負担される。

   4.← 定期予防接種による健康被害の救済措置は予防接種法に基づいて公費負担される。

コメント

タイトルとURLをコピーしました